【話の肖像画】インフルエンザに挑む(中)ウイルス学者・河岡義裕
2012.5.2 03:17
■H5N1がパンデミックに
--研究の停止はどうなれば解除されるのですか
河岡 論文の公表とは別で連動はしていない。欧米がウイルス研究のバイオセキュリティー(防疫対策)上の基準を示せば、各国がそれに従って解除に向かうでしょう。
--論文にまとめたフェレットを使った実験は、どんなものだったのですか
河岡 鳥インフルエンザウイルスが人の細胞に取り付いて増殖するにはどういった変異が必要なのかを調べるのが目的でした。それで人と同じ哺乳類で、実験しやすいフェレットを使いました。
--実験の結果は
河岡 2009年にパンデミック(世界的大流行)を引き起こした人のインフルエンザウイルス(H1N1)は、フェレットからフェレットにすぐに空 気感染した。ところが人の細胞を認識するようにわずかに遺伝子操作した鳥インフルエンザのH5N1ウイルスは最初、空気感染しなかったが、フェレットの間 で感染を繰り返すうちに空気感染するようになった。
--フェレットの細胞内で突然変異を重ねてフェレットに感染しやすいウイルスに変わったということですか
河岡 そうです。それでもまだ09年のパンデミックウイルスに比べて感染力は弱かった。実験で生まれたH5N1ウイルスはこのままでは人から人へと次々と空気感染するような性質ではないと思われる。
--毒性の方は
河岡 09年のパンデミックウイルスと同等の弱毒か、それ以下です。
--実験の成果は
河岡 H5N1ウイルスは香港で1997年にニワトリの間で大流行した。それから15年がたつ。「これだけ時間が経過しても人の新型インフルエン ザウイルスに変異していないからパンデミックは起きない」という専門家がいますが、この実験結果を見ればそんなことはないと分かる。これが大きな成果で す。
--長いけど、導火線に火が付いた状態がまだ続いているということですね
河岡 ええ。ただ、どうして時間とともに少しずつ人に感染しやすくなっているのかはよく分からない。
--H5N1ウイルスは人の間で大流行する?
河岡 ニワトリの間で流行しながら変異を繰り返して人の細胞にくっつきやすくなっている。人のインフルエンザウイルスのように低温で増殖しているものもある。パンデミックを起こす可能性はある。
--特殊なウイルスなのでしょうか
河岡 H5N1ウイルスは長い時間をかけてここまできた。本来、鳥インフルエンザウイルスはそういうものではない。H5N1ウイルスは他の鳥イン フルエンザウイルスとは明らかに違う。ネコにもイヌにもいろんな動物に感染している。これだけ多くの哺乳動物に感染する鳥インフルエンザウイルスはこれま でなかった。
--感染した人の6割が死ぬようないまの毒性を持ったまま人のインフルエンザウイルスに変異することもあるのですか
河岡 それはあり得ない。なぜかというと、強毒のままではその流行を維持できないからです。人がバタバタと死ぬようなことになれば、ウイルス自体が絶えてしまう。弱毒にならないと、流行はしない。(論説委員 木村良一)
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120502/scn12050203180001-n1.htm
鳥インフル研究、テロ悪用懸念 米諮問委が科学誌に声明
2012.2.1 11:38
日欧の科学者による鳥インフルエンザ研究論文の一部を削除するよう米政府の科学諮問委員会(NSABB)が勧告した問題で、同委員会のメンバーら は1月31日、テロなどに悪用される恐れがあるなどと指摘する声明をあらためて科学誌に発表し、研究者らに理解と協力を求めた。
NSABBの議長代理を務める北アリゾナ大のポール・カイム博士らによる声明で、米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャー(いずれも電子版)に掲載された。
声明は、東京大医科学研究所の河岡義裕教授やオランダ・エラスムス医療センターの研究チームによるH5N1型鳥インフルエンザの遺伝子を改変する 研究について、哺乳類から哺乳類に効率よく感染する可能性を突き止めた「非常に重要な成果だ」と評価。一方で、「バイオテロに対する懸念も投げかけた」と 指摘した。(共同)
◆東大グループが成功、テロ悪用の可能性警告
1918年に大流行し、全世界で2000万人以上が死亡したインフルエンザ「スペインかぜ」の性質を持つウイルスを作り出すことに、東京大学医科学研究所のグループが、海外の実験施設で成功した。
マウスに感染させたところ、肺が出血するなど強い病原性が確認された。長い間、謎だったスペインかぜの毒性の秘密に迫る一方、インフルエンザがバイオテロに悪用される可能性を警告するものとして注目される。
スペインかぜは、短期間に肺に水がたまるなどして呼吸困難に陥り、死亡するケースが多く、インフルエンザの中でも病原性の強いウイルス。この流行で米国人の平均寿命は10歳以上も下がったと言われる。
強い病原性の理由は不明だったが、99年以降、当時の患者の保存組織などから、8個の遺伝子のうち、4個の配列が判明した。
同研究所の河岡義裕教授と高田礼人助手らは、厳重な密閉性を持つカナダの実験施設で、4個の遺伝子のうち、ウイルスが感染する際などに重要な働きをする2 個の遺伝子を、現存のインフルエンザウイルスに組み込んだ。この結果、マウスに肺炎を起こすだけだったウイルスの病原性がさらに強くなり、肺の組織が出血 を起こすことが確認された。
河岡教授は「テロの危険性を考え、ウイルスの遺伝情報をどこまで公開するべきかをきちんと議論する必要がある。また、ワクチンの大量生産や抗ウイルス薬を備蓄する体制整備が必要だ」と話している。(読売新聞
2002/10/21)
「スペイン風邪」免疫異常で重症化 人工ウイルスで実験
世界で大流行した「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザのウイルスが、ウイルスに対抗する免疫機能の異常を引き起こす強い病原性によってサルを死なせ てしまうことを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授を中心とする日米カナダの研究グループが実験で示した。18日付の英科学誌ネイチャーで発表する。
1918年から数年間猛威をふるったスペイン風邪は、全世界で4000万人の死者を出したとも言われている。その後、残されていた当時の標本などからウイ ルスの遺伝子配列がわかり、同じウイルスを人工的に作り出せるようになった。グループは、人工ウイルスを生物学的にヒトに近いカニクイザルに感染させ、症 状を調べた。
ヒトやサルはウイルスに感染すると、その活動を阻止しようとする免疫機能が体内で働く。ウイルスの増殖を阻止するため、インターフェロンというたんぱく質を分泌することなどが知られる。
ところが、この人工ウイルスに感染させたサルの場合、インターフェロンの分泌が抑えられるなどの異常が現れた。その結果、体内でウイルスが増え続けて肺炎 や肺水腫を起こし、死に至ることがわかった。インフルエンザウイルスが、マウスなどに重い症状を起こすことは実験で確かめられていたが、サルの仲間で重症 化の仕組みが確認できたのは初めてだ。
現在、アジアを中心に問題となっている鳥インフルエンザウイルスがヒトに重い症状を起こすのも、同様の仕組みで説明できる可能性がある。河岡教授は「さら に研究を進めることで、鳥インフルエンザや新型インフルエンザの治療に役立てたい」と話している。(朝日新聞
2007/01/18)
スペイン風邪:ウイルス再現 免疫異常で増殖、毒性強く
1918年に世界的大流行を起こしたインフルエンザ「スペイン風邪」のウイルスが、各種のインフルエンザの中でも特に毒性が強かった(高病原性)ことを、 東大医科学研究所とカナダ・米国の共同研究グループがサルの実験で示した。感染したサルは免疫反応をうまく起こせず、ウイルスの大量増殖を許して、回復不 能な状態に陥った。18日の英科学誌ネイチャーに論文を発表する。
同研究所の河岡義裕教授らは、カナダ公衆衛生局のダーウィン・コバサ研究員らと協力し、解明済みの遺伝子配列からスペイン風邪ウイルスを人工的に再現。サル7匹の鼻や気道に注入した。
その結果、サルは重い肺炎を起こし、呼吸困難に陥った。回復不能となり、それ以上苦しませないため感染8日後に安楽死させたサルは、肺の中に水分が大量にたまり、水死に近い状態だった。
これに対し、普通のインフルエンザウイルスを感染させたサル3匹は、肺炎を起こさず軽い症状だけで回復した。
免疫の働きを調べると、普通のインフルエンザに感染したサルは、感染直後から体内でウイルス増殖を抑える「インターフェロン」という物質を多く作ってい た。感染8日後には、ウイルスはほとんど検出されなかった。一方、スペイン風邪ウイルスのサルはインターフェロンをほとんど作らず、感染8日後も大量のウ イルスが検出された。
河岡教授は「サルを殺すほど強いインフルエンザウイルスは他にない。免疫反応の異常は、鳥インフルエンザ(H5N1型)が人に感染した場合にもみられる。悪性のインフルエンザに共通なのかもしれない」と指摘している。【高木昭午】(毎日新聞
2007/01/18)
(メモ)
江原元氏のサイトが参考になる。
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/index.html
by unimaro
東京新聞社説 小沢元代表控訴